【2020年】北海道の誘致は見送り!IR推進は継続

北海道には釧路・留守都村・苫小牧市の3つの候補地がありますが、新千歳空港・交通網などの利便性や経済効果の高さから、2018年12月5日に苫小牧市を優先して誘致することが決まりました。

しかし、苫小牧の候補地にはラムサール条約に登録されている希少な動物や生態系などがあり、開発により環境に影響を与えてしまう懸念がありました。
北海道では環境アセスメントを行って環境保全に取り組みながら誘致していく必要があるとしており、環境アセス手続きに3年ほどかかると見込んでいます。
そのため、政府が定めた申請期間(2021年1月4日〜7月30日)には間に合わないということで、2019年1月29日に正式に誘致を見送っています。

ただし、2020年は新型コロナウィルスや汚職事件、国の基本方針の公表など様々な変化が起こっており、北海道を取り巻く状況も変化してきています。
ここでは今一度状況を整理しながら、北海道の誘致について解説していきます。

北海道, 政府の申請期間遅延でも今回の申請は見送り

国では、2019年時点で候補地の申請期間を2021年1月4日〜7月30日としていましたが、IR汚職事件や新型コロナウィルス対策に追われたため、基本方針の公表や申請期間が9ヶ月以上延期しました。
2020年10月9日にようやく感染症対策などを盛り込んだ基本方針案を公表し、申請期間も新たに2021年10月1日〜2022年4月28日に延長。
この延長のため、誘致が進んでいた候補地も足踏み状態となり、北海道が誘致レースに追いつく可能性も高まりました。

しかし、2020年10月16日の道知事の会見ではこの条件下でも今回は見送るとしています。その理由は、環境アセスメントと誘致の時間軸問題が解消されないためです。

道知事は2019年の誘致見送りで以下の理由を述べており、環境アセスメントの実行期間とその間に誘致した場合のリスクを懸念していました。

・希少な動植物の調査に最低2シーズンほど必要で、その上で環境アセスの手続きをするには3年はかかる
・環境アセス未完了の状態で誘致も可能だが、環境アセスの結果によっては施設の着工ができなくなるリスク
・着工ができなくなった場合の道民の負担が大きい

しかし、北海道では必要とされている環境アセスメントがいまだに実施されていません。

苫小牧市は独自の環境調査で『環境に拝領しながら100haの用地確保が可能』だとしながらも、実際に事業が実施される際には更なる調査が必要であるとし、道に対して環境アセスの必要性を掲げています。

基本方針案を精査しながら検討を継続

このように環境アセスや関連した誘致は進んでいませんが、北海道ではIRを諦めたわけではありません。
なぜなら道では、政府が複数回に分けて区域認定する可能性を想定しているからです。

過去に政府は『与党IR実施法に関するワーキングチームとりまとめ』(2018年)で、最初の認定から7年後に区域認定数の見直しを行うとしていました。
現在、区域認定数の見直しについて国から確定的な情報は出ていませんが、道では以下のような発言が散見されており、2028年以降を見据えている様子が伺えます。

・2019年末に道幹部が海外事業者4社に『3つ目は後で選ぶ可能性がある』と伝えたという報道
・道や道知事による「7年後の区域数再検討」を想定した発言など

さらに、道知事の定例記者会見(2020年10月16日)では、10月9日に公表された政府の基本方針案を十分に精査し『苫小牧市と連携しながら計画的に取り組んでいく』と、述べられました。
また道と連携していく苫小牧市も、2020年度の予算案にIR推進事業として1500万円を計上し、上記の環境調査も行うなど誘致に向けた動きを続けています。

北海道のIR誘致は、今後2回目の区域認定が行われるかどうかも含めて、長い目で注目していく必要がありそうです。