【2020年】官民まとまりIR誘致継続!長崎ハウステンボス

長崎県は、九州全体への経済効果を目指し『オール九州』を掲げて官民一体でIR誘致を推進しています。

候補地は日本最大のテーマパーク『ハウステンボス』で、30haの土地と建物の一部がIR用地となる見込みです。
すでに、長崎県・佐世保市・ハウステンボス社長の間で土地と建物の『条件付売買』が合意されており、国からIR認定を受けた際に条件付きで売却・開発される予定となっています。

2020年は新型コロナウィルスによる政府の政策の遅れなどがありましたが、長崎県は既に1億円以上の予算案や交通アクセスの整備も行いながら、スピード感のある誘致推進を行ってきました。今後は一体どのように動くのか?これまでの状況も整理しながら解説していきます。

2021年夏までに事業者選定予定

2020年に入り、長崎県ではIR誘致に向けた体制を以下のように整えてきました。

・2020年1月:ギャンブル等依存症対策推進計画策定・公表
・2020年3月:IR基本構想案公表
・2020年4月:実施方針(案)公表

そして6月に事業者選定に向けた個別説明会を実施し、国の従来の申請期間(2021年1月4日〜7月30日)に間に合わせるため、7月末頃に事業者の募集を予定していました。しかし国の基本方針案の公表が遅れたため、事業者の募集は延期となりました。

2020年10月9日に国から新たな基本方針案が公表されたことを受け、2021年夏までの事業者選定完了が新たな目標として掲げられています。

長崎県のIRに名乗りを上げている事業者名は以下の通りです。

・カジノオーストリア・インターナショナル(オーストリア国営)
・オシドリ・インターナショナル(香港)
・カレント(日本)
・ピクセルカンパニーズ(日本)
・ソフィテルマカオ・アットポンテ16&ゲットナイスホールディングス(香港)

ピクセルカンパニーズは、長崎県で事業者募集に向けた準備が始まってすぐの2020年11月16日に正式に参入を表明しました。

行政リードで民間企業とIRをマッチング

また、長崎県では国の基本方針案公表後、以下の2つの協議会を発足させました。

・2020年10月19日:九州・長崎IR安全安心ネットワーク協議会準備会
・2020年10月30日:九州IR推進協議会(仮称)

『九州・長崎IR安全安心ネットワーク協議会』の準備会は、ギャンブル依存症・青少年健全育成・治安維持・組織犯罪などについて対策を検討するものです。
県の大学病院、県警、市東部7地区の自治協議会、市PTA連合会、早岐地区連合防犯協会、早岐地区暴力追放運動推進協議会など様々な組織の代表で構成されていて、IRに慎重な団体も参加しているのが特徴。
IR誘致が決まった際には協議会へ移行し、安全・安心の街づくりを目指していきます。

また『九州IR推進協議会(仮称)』は、IRの経済効果を地元調達によって九州全体に行き渡らせられるよう、行政リードで民間団体をメインとしたビジネスマッチングを行っていきます。

このように長崎のIR誘致では、IRのメリットと課題をバランスよく解決していくための組織を官民一体で行っているのが特徴です。

九州新幹線・西九州ルート(長崎ルート)の動向に注目

長崎のIR誘致では、課題として掲げられている交通アクセスの問題にも取り組まれています。

ハウステンボスへは、最も近い佐世保駅や佐世保港から鉄道や路線バスを使って約20〜30分で到着します。しかし、福岡空港や博多駅からは約2時間程かかってしまい、旅行客に少々負担がかかってしまいます。

長崎県ではそういった課題を解決すべく、新大阪までのルートが確保できる『九州新幹線・西九州ルート(長崎ルート)』『全線フル規格化』の整備を推進してきました。

「全線フル規格化」の政府へ要望は安倍政権下から行われており、県側でも4400億円以上の投資を行って「フル規格」の整備を行ってきました。

しかし政府と佐賀県との折り合いがつかず、佐賀から福岡間ルートの整備方式が現在も未定となっています。
佐賀県は、「フル規格」にした場合の整備にかかる財政負担既存在来線への悪影響から「フル規格反対」の立場をとっており、整備に必要となる環境アセスメントへの合意も行っていません。

そのため、期待されていた「九州新幹線・西九州ルート」の2023年の着工も困難となりました。
九州新幹線の新ルートは長崎のIR誘致で重要なポイントとなるため、今後の動向に注目していく必要がありそうです。