カジノ法案は深刻化する少子高齢化や経済の低迷に伴い、インバウンド誘致を主として経済復興を目的に2016年12月に可決されました。

実際に、カジノ法案によってどのような影響があるのか?カジノはいつできるのか?といった疑問に一つずつ詳細に解説していきます。

カジノ法案最新情報

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カジノ法案(IR推進法案・IR実施法案)とは

カジノ法案は、『IR推進法案』と『IR実施法案』の総称として多く使用されており、正式名称は『特定複合観光施設区域(IR)の整備の推進に関する法律』です。

この法案は、国際会議場やスポーツ施設、劇場、映画館、ホテル、ショッピングモールなどの施設にカジノを含む統合型リゾート(特定複合施設)を設置するための法案です。

日本の経済を活性化させ、観光業の発展を促進する目的で、IR推進法案は2016年12月に可決、IR実施法案は2018年7月に成立しました。

法案の可決によって、政府はIR施設の整備を推進し、観光客の誘致や地域経済の振興を図り国際競争力の強化を目指しています。

カジノ法案可決で決まった主なこと

カジノ法案で決まった下記項目について解説していきます。

その中でも、入場制限基準はカジノ利用者に大きく関わる重要事項なので参考にしてください。

  • 入場制限基準
  • 日本で建設できるカジノ(IR)の数
  • カジノの敷地面積の割合

入場制限基準

カジノ法案によるIR整備では、ギャンブル依存症対策として入場制限が定められています。

  • 入場制限制度
  • 入場回数制限制度
  • 入場料の徴収

特定の人物の入場を排除することが目的の「入場制限制度」は、20歳未満や暴力団員の入場を禁止しています。

入退室時の本人確認には、日本人および国内居住者にはマイナンバーカードなどが、外国人にはパスポートが用いられる予定です。

入場回数制限制度は、一定の期間における最大入場回数を制限する目的で、日本人および国内に居住する外国人は1週間に3回まで、28日間で10回までの回数制限が設けられます。

入場料に関しては、外国人観光客は無料、日本人と日本在住外国人には1日に6,000円の入場料が必要です。

日本で建設できるカジノ(IR)の数

日本で建設できるカジノ(IR)の数は、3か所までと決まっています。

現段階で選定済みの建設予定地は大阪の1か所だけです。

大阪以外の建設地については今だ不明確ですが、長崎や東京が有力候補に挙げられているため、将来的には、これらの地域でのIR施設の建設が進展する可能性があります。

カジノの敷地面積の割合

カジノ営業区域の延べ床面積は、IR全体の3%以下に制限されています。

現時点で予定されている大阪IRの面積は、約492,000平方メートル(東京ドーム約10個分)であるため、単純計算するとカジノの敷地面積は、約14,760平方メートル(サッカーコート約3面分)の広さを確保することが可能です。

カジノ法案のメリット・デメリット

カジノ法案のメリット・デメリット

カジノ法案によって日本にどのような影響をもたらすのか、メリット・デメリットについてみていきましょう。

カジノ法案のメリット

観光客増加
地域活性化
財源確保

まず、カジノ法案のメリットとして以下の3つが挙げられます。

  • 観光客増加
  • 地域活性化
  • 財源確保

カジノ法案と聞くといかにもカジノだけを建設するようなイメージがあります。しかし、実際にはレストランやアミューズメントパーク、ホテルや温浴施設といった統合型リゾート施設がメインとなっており、カジノは全フロア中のわずか3%の面積のみに併設される予定です。

こういった大規模な統合型リゾート(IR)建設によって、インフラの整備で雇用増加や地域経済の活性化を促し、インバウンド増加による財源確保が期待されています。

また、オリンピックや万博などの大型イベント期間終了後に懸念される景気の低迷も、IRの経済効果によって下支えできる可能性が期待されています。

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カジノ法案によるデメリット・問題点

マネーロンダリング
ギャンブル依存症
汚職問題

対してカジノ法案によるデメリット・問題点には以下の3つがあります。

  • マネーロンダリングの温床になる
  • ギャンブル依存症の増加
  • 汚職問題

ギャンブルは中毒性が高く、国内にカジノがない現時点でもギャンブル依存症の疑いがある人が国内に約500万人はいると推定されています。

また金銭問題や犯罪組織による治安悪化や、マネーロンダリング・汚職問題なども懸念材料の一つです。

政府ではこういった懸念を解消すべく、1回6000円の入場料の徴収、入場回数の制限、本人確認などの対策を行う『IR実施法』や、依存症対策を義務付ける『ギャンブル等依存症対策基本法』を成立させるなど、様々な取り組みを行なっています。

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日本初カジノは大阪!オープンするまでの流れ

日本初のカジノは大阪に位置する人工島、夢洲(ゆめしま)地区に建設されることが決定しています。

この大阪IR計画では、夢洲にカジノを含むホテル、国際展示場、会議場、ショッピングモール、映画館、テーマパークなど多彩な施設が併設され、大阪の新たなランドマークとして誕生する予定です。

現在は、2025年の大阪万博開催に向けた夢洲のインフラ整備が進行中の段階であり、今後施設の着工時期や「カジノ管理委員会」による財務の状況の審査、カジノ事業のライセンス発行手続き、機器などの検査を経て開業準備が行われていきます。

開業時期について当初は、2022年の東京オリンピックに合わせた開業を目指していましたが、新型コロナなどパンデミックの影響もあり、2029年冬頃から2030年秋頃への開業時期の変更を発表しました。

候補地決定後、開発事業者の選定やインフラ整備、現在までの流れも含めて確認していきましょう。

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衆議院総選挙・IRを推進する動きが始まる
実際のIR誘致に関する下準備の段階です。

1999年に石原慎太郎元都知事がお台場カジノ構想を提唱後、反対派により構想案は暗礁に乗り上げました。しかし、2010年にお台場カジノ構想を元に統合型リゾートをオープンしたシンガポールの成功例を受け、カジノ法案の推進が再開されました。

2014年11月には自民党・維新の党の選挙公約にIRの推進が盛り込まれ、衆議院総選挙で自民党が勝利。2015年には与党3党によるIR推進法案提出が認められ、審議が本格化しました。

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IR推進法の成立と施行
IR推進法とは、『収益源となるカジノを認可した統合型リゾートを設置し、運営していくための土台づくりを行なっていこう』という内容の法律です。

カジノの収益によって地域のオリジナリティある自由な発想や民間事業者による運営を実現し、地域や日本経済の復興に役立てることを目的として全体的な枠組みが定められています。

2015年にIR推進法案が与党によって提出され、2016年12月に成立・施行されました。

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IR推進本部設置
IR推進本部は、2017年3月に内閣に設置されました。

正式名称を『特定複合観光施設区域整備推進本部』と言い、内閣総理大臣を本部長としてIRの整備を集中的に行なっていきます。

この機関は、IRによって『観光先進国』を実現するために必要な法律や、候補地の決定、適切に運営を監督するための役割分担の決定など、総合的な整備が行われます。また、この機関で閣議決定された内容は国会へ提出されます。

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IR整備法(実施法)の成立と公布
2017年に複数回行われたIR推進本部の会議を経て、2018年4月にはIR整備法が国会へ提出され、同年7月に成立・公布されました。

IR整備法は正式名称を『特定複合観光施設区域整備法』、通称『カジノ法』と言います。IR推進法がIR設置のための全体的な枠組みであるなら、IR整備法はその枠組みに沿って入場料や規制措置・免許制度など、運営する上で具体的な必要となる規制を定めています。

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ギャンブル等依存症対策基本法の成立
IR事業で特に懸念されているギャンブル依存症対策は、IR推進法の成立によって2016年12月頃から政府での取り組みがスタートしました。

約2年にも渡る協議の結果、2018年7月に『ギャンブル等依存症対策基本法』が成立し、同年10月に施行されました。

この法律では初めてパチンコがギャンブルと認定され、ギャンブル等の依存症に対して医療体制の整備や社会復帰の支援など、国や地方公共団体などが行うべき義務などを定めています。

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カジノ管理委員会の発足
IR整備法の公布によって2020年1月に『カジノ管理委員会』が発足されました。

カジノ管理委員会は『政権から独立した強い権限を持つ三条委員会』として設置され、専門家達が世界最高水準のカジノ規制を行いながらクリーンなIR事業となることを目指して運営されます。

IR推進本部はIRを設置する前の法整備などを行う機関でしたが、カジノ管理委員会はIRオープン後の施設・機器などの規制や、納付金などの徴収、入場規制などによる依存症防止対策、国際連携など運営に関わる具体的な機能を担います。

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基本方針の策定
基本方針では、IRの法令をどのように解釈するのか?どのように3箇所の候補地を決めるか?どのようなIRを作るか?といった方針が定められます。

当初は2020年1月に策定予定でしたが、IR汚職事件の影響で2020年の4月以降に延長されました。

現在は基本方針案のみが既に公表されている状態で、基本方針の策定はIR整備法の公布(2018年7月26日)から2年以内に行われることが定められています。

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候補地の正式決定・IR開発事業者の選定
基本方針の策定後、方針に従って全国の候補地から3箇所以内を正式に決定していきます。

決定は、2025年頃のオープンが目標とされていることから逆算すると、2020年〜2022年の間に行われる見込みです。

既に誘致をしている各地域でIR開発事業者の公募などが行われていますが、事業者の選定が実際に行われるのは候補地正式決定の後となります。

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IR開発~開業
開発はIR整備法や基本方針に沿いながらカジノ管理委員会の監督の元、各候補地と開発事業者によって行われていきます。

オープンは2025年頃目標とされていましたが、開催延期したオリンピックとの関連性や、新型コロナウィルスの影響で後ろ倒しになり、現在は2030年秋開業を目標としています。

カジノ(IR)誘致の海外成功事例

大阪カジノが成功した場合のイメージの参考として、海外のIR成功事例を紹介していくので参考にしてください。

  • シンガポール
  • オーストラリア

シンガポール

シンガポールでは、IR開業後4年で、国全体の観光客数が6割、観光収入が9割増加しており、かなり高い経済効果を生み出しています。

シンガポールIRは、施設数を2か所に限定し、ノンゲーミング施設(カジノ的要素を薄めること)を重視して統合リゾート化を推し進めたことが成功につながったのではないでしょうか。

2か所のIRが建設されたマリーナベイサンズとリゾートワールドセントーサは、それぞれ独自の施設コンセプトと顧客ターゲットを持ち、業績も安定的です。

また、シンガポールの対象マーケットがアセアン全域に広がっており、大きな経済圏を形成していることも成功の要因の一つです。

現時点では、アセアン内のIRやカジノ施設の供給量が多くないため、高い収益性が確保できています。

過当競争による収支リスクはあるものの、シンガポールのIRは安定的な業績を維持しているため、今後も成長が期待できるでしょう。

オーストラリア

オーストラリアのIRは、シドニーやメルボルンなど、複数の場所に存在しています。

中でも、メルボルンにあるクラウンカジノは南半球最大規模のカジノであり、高級ホテルやレジャー施設が完備されています。

オーストラリアのIRは、品の良さとフレンドリーさが特徴であり、老若男女が楽しむ場所として人気です。

ゲーミングゾーンではスロットやルーレット、ポーカーなどが楽しめ、スポーツベッティングも盛んにプレイされています。

一方、ノン・ゲーミングエリアでは、クラブやレストラン、スポーツバーが連携しており、スポーツ観戦や交流が楽しむことが可能です。

オーストラリアのIRは、カジノゲームだけでなく、レジャーやエンターテイメントも充実しており、賭け事が主体ではない独自の魅力を持っています。

日本カジノで残されている課題

大阪カジノは2030年の開業を予定していますが、それまでに解決しておきたい課題がいくつか残っているのでそれぞれ解説していきます。

  • 取引するゲーム開発業者
  • カジノ勝利金と損失金の税務上の扱い
  • ギャンブル依存症発症後のケア
  • 2番目のカジノの候補地

取引するゲーム開発業者

大阪IRの開業準備が進む中、取引するゲーム開発業者についても検討が必要です。

中でも、スロットゲームについては、どの業者がマシンを提供するかひそかに注目を集めています。

日本のパチンコ・パチスロ業者やアーケードゲーム開発業者は、スロットの開発ノウハウを持っているため、日本ならではのオリジナルスロットやパチンコ・パチスロに模した機種が開発される可能性もあります。

このような展開になれば、日本のパチンコ・パチスロとの違いについても注目が集まるでしょう。

カジノ勝利金と損失金の税務上の扱い

日本の税制上、ギャンブルでの勝利金は一時所得として課税され、損失金は経費として計上できません。

このため、カジノも同様の扱いになれば、仮にバカラで1億円勝っても、一時所得として1億円が課税される可能性があります。

さらに、損失金は経費として計上できないため、勝利金にまるまる税金がかかり、損失金次第では差し引きマイナスになる可能性も出てきます。

しかし、どれだけ勝っても勝利金が課税の対象にならなければ他ギャンブルとの整合性がつかなくなり、別の懸念点が生じるでしょう。

また、海外カジノからの持ち帰りであれば勝利金を申告しなければ基本バレないと言われていますが、日本のマイナンバーカードと入場情報は紐づけられているため、勝利金の追跡が可能になってしまいます。

このため、税金逃れは困難であり、日本の利用者がカジノに行くメリットが損なわれる可能性があります。

税金を真正面から取るなら、利用者がカジノに行くメリットはないことを警告し、利用促進のためにも、税制が利用者にとって適切であることを期待したいところです。

ギャンブル依存症発症後のケア

ギャンブル依存症が発症した場合のケアに関してカジノ法案では、入場規制を設けることで抑止するとしています。

しかし、依存症が発症した人への具体的なケアに関する議論はまだ行われていません。

ギャンブル依存症は治すのが難しい精神疾患の一つであり、入場規制だけで解決できないことは明白です。

そのため、依存症を発症した人々に対して、適切な支援や治療プログラムを提供する必要があります。

今後、入場規制と同時に、依存症治療の拡充や啓発活動、サポートグループの設立など、包括的な対策への議論が必要になるのではないでしょうか。

2番目のカジノの候補地

前述の通り、日本ではカジノ(IR)の建設が最大3か所まで可能とされており、大阪に続く2番目のカジノの候補地に関心が集まっています。

カジノ誘致競争からは一旦撤退した地域もありますが、長崎(ハウステンボス)や東京(お台場)など、まだ完全に断念していない地域も存在します。

大阪のカジノ施設が稼働を開始すると、その業績や効果が次のカジノの候補地選定において重要な参考になることは間違いありません。今後も、各地のIR候補地の動向に注目が集まるでしょう。

『日本のカジノ候補地』を詳しく見る>