【2020年】愛知県のIR誘致は中部国際空港が一歩リード金城埠頭は誘致難航

日本列島の真ん中に位置する愛知県は、県・常滑市の2者でIR誘致している中部国際空港と、名古屋市が独自で誘致している金城埠頭の2つの候補地があります。

2018年時点では両者が競う形になっていましたが、候補地探索や知事選、新型コロナウィルスによる影響など、様々な要因でそれぞれの状況が少しずつ変化してきました。

ここでは中部国際空港と金城埠頭、双方の誘致状況を振り返りながら、今後の愛知県のIR誘致を見据えて解説していきます。

【中部国際空港】慎重ながらも誘致検討を前進, 国の方針と情勢も見極める

愛知県と常滑市がIR誘致を検討している中部国際空港は、伊勢湾海域に埋め立てられた「空港島」に位置しています。面積約470haの市街地から離れた人工島で住民がいないため、治安の悪化が起こりにくいなどの点でIR誘致に適していると言われています。

愛知県と常滑市では誘致を目指し、ギャンブル依存症や治安問題のようなIRの課題と、経済的なメリットをしっかりと認識しながら慎重に研究検討してきました。
新型コロナウィルスの影響で若干足踏み状態となっていますが、調査や事業者への意見募集など、進み具合は良好で期待度の高い候補地です。

候補地「中部国際空港島」のMICE総合整備が進む

愛知県には歴史の長い名古屋空港がありますが、現在はコミューター航空やビジネス機のような小型航空機向けに利用されており、大型機などが利用する国際的なハブ機能は中部国際空港に移動しました。

中部国際空港が位置する人工島では2019年に国際展示場が開業し、大型クルーズ船誘致のための整備など、IRも想定した開発が検討されています。また名古屋中心部へ短時間でアクセスするためのリニア・交通網の整備で東京・大阪など大都市圏との連結も目指しています。

こうした開発は、愛知県が掲げている『名古屋大都市圏ハートランドビジョン』『MICEを核とした国際観光都市』において検討されているもので、今後IRを実際に含めるかどうかの審議が続いています。

反対派の榑松氏に大差をつけて大村知事3選

愛知県では2019年にIR誘致のキーポイントとなる県知事選が行われ、現職の大村知事が140万票以上の差をつけて3選しました。
今回の選挙は、対抗馬の榑松氏(IR反対と教育・福祉の充実を掲げていた)に大差をつけている点や、大村氏への得票率・投票数が前回2015年の知事選より高い(83.3%)という点が特徴です。

ただし、大村氏は推薦を受けている「新政あいち」「立憲民主党」からIRへの慎重姿勢を求められていたため、選挙公約でIR誘致についての言及をしていません。
代わりに「リニア中央新幹線の整備」「産業首都としての発展」「グローバル展開」や、MICEの誘致などのみが掲げられていました。

大村知事は慎重ながらも愛知県の発展に向けて前進していく姿勢ですが、こういった公約の有無が今後のIR誘致に影響するかどうかは、注視していく必要がありそうです。

ちなみに、2020年6月頃に高須克弥会長と名古屋市の川村市長を中心に、大村知事のリコール運動が起こりました。
しかしIR誘致に関するものではなく表現の自由などに関するもので、11月7日に高須会長の体調不良などが原因でリコール運動が中止となっています。
このリコール運動では43万筆以上が集まりましたが、住民投票が必要な86万筆には遠く及んでいません。

意見募集や調査が継続, 知事の判断待ち

2019年2月の愛知県知事選後、IR誘致に関する調査や事業者への意見募集などは以下のように継続して行われています。

・『平成30年度国際観光都市機能整備調査事業』の報告書を公表
・IR事業者からの意見募集(特定複合観光施設区域整備の事業可能性の検討に係る意見募集)

この意見募集は県として初めて行われたもので、国の基本方針策定が遅れたため当初予定の1月から5月まで募集期間が延長しました。意見募集の結果、海外事業者4社と国内事業者9社の参加があり、いずれの事業者も愛知県でのIR開発について関心高く検討しているということでした。

ただし県では、新型コロナウィルスが事業者に与えた影響や国の基本方針など、慎重に見極めて判断していく姿勢をとっています。

【金城埠頭】名古屋市は候補地探索に難航、三重県を応援

名古屋市は地域の発展や観光地としての魅力アップを目指して、独自でIR誘致に取り組んでいます。愛知県とは別に誘致を検討しているため、実質的に愛知県内で候補地が競合する形になっています。

また名古屋市では依存症対策や治安対策などに対する課題も調査検討していますが、現在はそれ以前に候補地探索で難航している状態です。

3つの候補地を検討

名古屋市では事業者にヒアリングを行いながら、以下の3箇所を候補地として検討しています。

・名古屋市中心部
・名古屋港
・桑名市ナガシマスパーランド周辺

名古屋市中心部と名古屋港は名古屋駅から30分以内の立地で利便性が高く、事業者の要望により5〜10haの土地を探索しています。
また、「ナガシマスパーランド」は愛知県ではなく三重県桑名市ですが、立地条件の良さやアクセス手段の整備がある点などが注目され、候補に上がっています。

この中で初期の頃から検討されていたのが、名古屋港『金城埠頭』です。ここには「ポートメッセなごや」と呼ばれる国際展示場があり、名古屋市ではポートメッセの再開発計画でIRを含めるかどうかが検討されていました。
しかし現在、国際展示場計画を先に進める必要があるため調整が難しい、ということで暗礁に乗り上げています。

事業者全社が名古屋市内に強い関心

河村市長は、2018年末以降にアメリカ系や中国系のIR事業者5〜6者から市長室でヒアリングを行っており、中部国際空港よりも名古屋市内に非常に強い関心を示されていると述べました。

大阪や東京や横浜など他にも有力な候補地が出てはいますが、それらの都市の中間地点である名古屋は事業者にとって魅力的なポイントとなっています。

また、愛知県と常滑市で上げている中部国際空港(セントレア)は陸上から離れた人工島にあるため、交通アクセスや距離の遠さがネックになっており、名古屋市内の条件の良さに注目が集まっています。

候補地として三重県を推すも、可能性は低い

河村市長は名古屋市内や名古屋港(金城埠頭)への誘致も検討していましたが、市で行われている開発計画や立地などの調整が難しいため、現在は三重県の『桑名市ナガシマスパーランド』を推薦しています。

河村市長は西愛知や三重県など地域全体の発展を目指したIR誘致を考えており、陸続きで既にインフラも整っているナガシマスパーランドは事業者にとっても魅力となっています。

ただし三重県や桑名市にはIR誘致の予定はなく、河村市長から突然話題を振られたため驚きを隠せない状態でした。IRが持つ課題や広い土地確保も難しいとし、今のところ調査研究以上の進展はありません。

【まとめ】誘致に向けて前進中の中部国際空港に注目

名古屋市では候補地探索が難航していますが、河村市長が誘致を諦めたわけではありません。IR誘致で地域にワールドクラスのコンサートなども誘致でき発展に繋がるため、引き続き検討をしていく姿勢をとっています。
ただし、現在行われている国際展示場の開発や市内中心部の用地探索が難航していることから、政府が示した申請期間(2021年10月1日〜2022年4月28日)に手をあげる可能性は低そうです。

対して、中部国際空港は慎重な姿勢ながらも誘致へ向けて前進しているので、今後の県や知事の動向に注目です。